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高森明勅
2023.4.19 08:00皇統問題

皇位継承の安定化へ向けて女性天皇・女系天皇以外の対案は?

次の世代の皇位継承資格者がたったお1方しかおられない。
そのような現実のもとでは、畏れ多いが、ご結婚も至難と
ならざるを得ないだろう。

にも拘らず、危機感が余りにも乏しいのではないか。

勿論、皇室の存続を望まないのであれば、危機感が無くても理解できる。
しかし、そうでないとすれば、どう受け止めたらよいのか。

私は長年、女性天皇・女系天皇を速やかに認める以外に、
皇位継承の安定化、皇室存続への道はない、と訴え続けて来た。
これに反対する人がいるなら、どうか皇位の継承をより安定化させ、
皇室の将来をより安泰たらしめ得る、“具体的な対案”を示してほしい。

その対案が、私の提案より妥当かつ実現可能性が高いのであれば、
直ちに私見を撤回して、そちらの方策の実現に、私も微力を傾けて
協力したい。
ということも、これまで繰り返し述べて来ている。

しかし残念ながら、これまでのところ、そのような対案は示されなかった。

例えば…
〇次代の唯一の皇位継承資格者であられる秋篠宮家のご長男、
悠仁親王殿下が後継者の男子に恵まれられるように、学校も止め、
ご公務もバッサリ削減して、ひたすらそのことに専念して戴く。

悠仁殿下の掛け替えのない、たった一度限りの人生を、一体、
何と心得ているのか。

そんな“ブラック”の極致のような所に嫁ごうとする(皇室に相応しい)
女性を期待できるのか。
ひたすら後継者を確保する為“だけ”に存在するイビツで空っぽな
皇室像では、長い歳月をかけて築かれた国民の皇室への敬愛と
信頼の気持ちが損なわれかねない。

〇旧宮家系子孫に男子が生まれたら、本人が拒絶の意思を
示せるようになる前の幼児の時点で、どんどん養子縁組で
皇室に入れてしまう。
→余りにも非人道的な発想に呆れる。
それに同意する親がいるのか。
受け入れる宮家があるのか。
国民がそのような仕打ちを見て、皇室を尊敬できるのか。

〇憲法が禁止する「門地による差別」について無理やり
解釈・運用をねじ曲げて養子縁組プランを押し通す。
→同意する旧宮家系子孫の当事者はいるのか。
受け入れる宮家はあるのか。
そんなことをすれば、皇室があたかも“国民平等”の理念を
傷付ける「差別の元凶」であるかのように、国民から
受け取られかねない。
その上、憲法の権威、信頼性が致命的に失墜する。

〇政略結婚により旧宮家系男性と未婚の女性皇族との
結婚を実現させ、その男子が皇位を継承できるようにする。
→同意する当事者はいるのか。
僅かでも強制の気配があれば、皇室の尊厳が傷付くのではないか。
そもそも、時計の針を逆に回すような時代錯誤なやり方に、
国民が共感できるのか。

…以上は勿論、話にならない。

どうか、上記以外の説得力のある対案を示してほしい。
なお、近年の皇室の出生率は1.2~2(プレジデントオンライン
「高森明勅の皇室ウォッチ」令和5年1月27日公開参照)。
なので、その事実が前提になる。

追記
プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」が4月18日に公開された。
チャールズ英国王の戴冠式に天皇・皇后両陛下の代理として
秋篠宮・同妃両殿下が参列されることに、予想以上の
逆風が吹いている背景について、私なりに分析した。

https://president.jp/articles/-/68673

 

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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